2010年08月05日

健康づくりから治療効果まで、「ビタミン」新時代に期待

毎日の健康維持に欠かせない栄養素、ビタミンB1が発見されて今年で100周年。日本人が世界で初めて抽出したビタミンB1は、脚気(かっけ)などさまざまな病気の予防や治療に貢献してきました。ビタミンは現在13種類。健康づくりから治療効果までビタミン新時代の展開が期待されています。


◆日本は研究の先駆者

ビタミンB1は明治43(1910)年、東京帝国大学農科大学(現東京大学農学部)教授の鈴木梅太郎博士が発見しました。米ぬかから有効成分を取り出し、アベリ酸と名付けました。44年に日本語で論文を発表したため、後に発表したポーランドの学者による、ビタミンという名称の方が先に世界に広まりました。

これをきっかけに、「微量で効果はあるが、人間の体内で作られない」という共通の性質を持つさまざまなビタミンが発見されました。

それらは水溶性と脂溶性の2つに分類。「水溶性」はB1のほか、全身の出血が起こる壊血病を治すビタミンCなどで、多量に取っても尿として排出され、体内に蓄積されません。「脂溶性」は夜盲症に効くビタミンAなどで、蓄積されるが、過剰だと副作用が出てしまいます。

ビタミンの特徴の一つが、不足すると特定の欠乏症を起こすことです。ビタミンが未発見のころ、明確に示された歴史的事実があります。

明治初期の日本海軍では毎年、兵士の3割が脚気にかかっていました。そこで海軍医務局は、ビタミンB1を多く含む肉などの洋食を取り入れたところ、患者はほとんどいなくなりました。一方、陸軍当局は軍医で作家の森鴎外らが白米主義にこだわったため、ビタミンB1欠乏に陥り、日露戦争での脚気による死者は戦死者の半数超の約2万7800人に達したといいます。このように、日本人はビタミン研究の先駆者であり、その大切さを体感してきました。


◆偏食による欠乏増加

ところが、最近では現代人の慢性ビタミン不足が指摘されています。ビタミンの摂取量は通常の食事で十分ですが、偏食による欠乏が増えているためか、現代人の疲労の原因の一つともいわれています。

一般に、忙しく働くときはビタミンの必要量は増える。特に疲労回復のエネルギー産生にかかわるビタミンB1、B2などの要求が高まります。同時に細胞を傷付ける活性酸素の発生も活発になるので、抗酸化のビタミンC、Eなども多く必要です。厚生労働省は「日本人の食事摂取基準」で、摂取の推奨量を示しています。

ビタミンについては、生理作用、薬理作用が詳細に明らかになりつつあります。例えば、がん治療の効果を高めるといった試みもあり、ビタミンの効能などを新たな視点で見直す時期にきているようです。

詳しくは、社団法人ビタミン協会と産経新聞社によるビタミン啓発キャンペーンのホームページをご覧ください。

ビタミン啓発キャンペーンのホームページ



■薬の効能に注目

ビタミンの薬としての効果に関心が集まっています。B群ビタミンは疲労回復や肩こり・腰痛の緩和効果があり、ビタミンCは慢性疲労症候群の治療薬になります。高齢者にはビタミンD、Kに骨粗鬆(こつそしょう)症の予防効果があるとの研究結果が出ています。

社団法人ビタミン協会会長の岩井和夫・京都大学名誉教授は、「ビタミンは従来の欠乏症に加えて、DNAなど生命の本質にかかわるところで作用していることが分かってきました。分子レベルで研究を深める必要があります」と話しています。